ホワイトボードに「AMRAP 12」「EMOM 10」「For Time」と並んでいると、種目名より先に略語で止まってしまうことがあります。AMRAPなどの略語は、難しい技の名称ではありません。ワークアウトの進め方と、終わったあとに何を記録するかを示す言葉です。
CrossFitを始めたばかりの段階で、すべての用語を暗記する必要はありません。AMRAP、EMOM、For Timeの違いに加え、RX・レップ・スコアの意味が分かれば、クラス中に次の動きを考え込まずにすみます。
ホワイトボードを見るときは、種目から追うより先に、形式と時間の条件をつかむのがコツです。ここではWODの読み方、3つの代表的な形式、設定と記録の残し方を順に整理します。
CrossFitのWOD用語は「時間」と「記録」を読むための言葉
WODはWorkout of the Dayの略で、その日のワークアウトを指します。ボックスごとに書き方は少し違いますが、形式、実施時間、種目、回数、重量が並ぶのが一般的です。形式を先に見れば、制限時間まで繰り返すのか、毎分スタートするのか、完了まで時計を動かすのかが分かります。
レップとラウンドも早めに押さえておくと読みやすくなります。レップはrepetitionの略で、動作を行った回数です。スクワット10回なら10レップ。複数種目を指定回数ずつ終えたひとまとまりが1ラウンドになります。たとえばエアスクワット10回とプッシュアップ5回を完了して、1ラウンドです。
タイムキャップは、そのWODに設けられた制限時間を意味します。For Timeに「12:00 cap」とあれば、12分以内の完了を目指す設定です。時間内に終わらなくても失敗ではありません。止まった時点のラウンド数やレップ数を記録し、コーチの案内に従います。
ホワイトボードは上から順に五つ確認する
クラス前は、次の五点を上から追うと全体像をつかみやすくなります。
- AMRAP、EMOM、For Timeなど、WODの形式
- 制限時間、あるいは何分間続けるメニューか
- 種目と、1回に行うレップ数
- 指定の重量や動作の基準
- 最後に残す記録が、時間・ラウンド数・レップ数のどれか
動き方が分からない種目を見つけても、自己流で始める必要はありません。デモの後に、可動域、重量、代替種目をコーチへ確認しましょう。
AMRAPは決められた時間でラウンドやレップを積み上げる形式
AMRAPはAs Many Rounds and/or Reps As Possibleの略です。制限時間の中で、決められたメニューを可能な限り多く繰り返します。終了の合図が来るまで、同じ順番でラウンドを重ねていく形式です。
たとえば「AMRAP 12」の内容が次の通りだとします。
- エアスクワット 8回
- プッシュアップ 6回
- リングロー 4回
3種目を終えると1ラウンドです。12分で5ラウンドを終え、次のラウンドでエアスクワット8回、プッシュアップ2回まで進んだなら、「5ラウンド+10レップ」がスコアになります。時間切れの瞬間にどこまで済んでいたかが、そのまま記録です。
AMRAPでは最初から飛ばし過ぎない
この形式で問われるのは、最初の1ラウンドの速さだけではありません。息が上がり過ぎない回数で区切り、動きの質を落とさずに積み上げる配分が欠かせません。途中で長く止まるほど急ぐより、フォームを保てる重量や回数に調整するほうが、初心者にはWODの狙いに沿っています。
残り時間が短くなったら、時計だけでなく現在のラウンドも意識します。ボックスやアプリでは「5+10」「5R+10」と書くことがあります。記録の表記に決まりがある場合は、そちらに合わせてください。
EMOMは毎分の開始で決められた動きを行う形式
EMOMはEvery Minute on the Minuteの略です。毎分の開始時点で指定されたレップを始め、1分の中で終えられた余り時間を次の開始までの休息にします。
「EMOM 10」の例を見てみましょう。
- 1、3、5、7、9分目:ケトルベルデッドリフト 8回
- 2、4、6、8、10分目:バーピー 6回
0分00秒にデッドリフトを始め、30秒で終えたら、1分00秒までは休めます。次の開始時刻になったらバーピーへ移ります。10分目まで繰り返すので、区間は合計10回です。
残り時間もメニューの一部と考える
毎回の残り時間を使って呼吸を整えられるのが、EMOMの特徴です。各区間の終了後に少し余裕が残る設定が合う場合もあります。毎分ぎりぎり、あるいは時間内に終えられない状態が続くなら、現在の重量や回数が合っていない可能性があります。
もっとも、何秒残すべきか、途中でレップ数を変えるかはWODの意図次第です。最初の数分で苦しさが強ければ、自己判断で押し切らずコーチへ伝えましょう。記録は、完了した区間ごとの重量・レップ数を書く場合と、全区間を終えたことだけを書く場合があります。
For Timeは決められた仕事を終えるまでの時間を測る形式
For Timeは、指定された種目と回数、あるいはラウンドをすべて終えるまでの時間を残す形式です。「3 Rounds For Time」と書かれていれば、各種目を3周終えるまでタイマーが動きます。
- 3 Rounds For Time
- 200mラン
- ケトルベルスイング 12回
- ボックスステップアップ 10回
- 12分のタイムキャップ
3ラウンドを8分42秒で終えた場合、スコアは「8:42」です。速さを意識する場面でも、動作の基準を崩さないことが前提になります。反復回数が多い種目は、早い段階から小分けにする、種目の切り替えを急ぎ過ぎないといった配分が結果に影響します。
タイムキャップまでに終わらないときも進捗を残す
12分で完了しなければ、タイマーが止まった地点までを残します。2ラウンドを終え、3ラウンド目のランを済ませてケトルベルスイングを7回行ったなら、「2ラウンド+207m相当」のように単純化しません。ボックスの指定に従い、「2ラウンド+ラン完了+7レップ」と書くほうが進捗を正確に伝えられます。アプリによっては種目ごとの入力欄が用意されています。
タイムキャップの有無、種目の順番、休憩を入れる指示は、同じFor TimeでもWODごとに異なります。「For Timeだから止まらず全力」と決めつけず、当日の説明を優先してください。
RXは基準どおりの設定、スケーリングは自分に合わせる調整
RX、あるいはRx’dはAs prescribedのことで、メニューに指定された動き・回数・重量をそのまま行う設定です。CrossFit公式も、Rx’dがボックス内で最も体力のある人を挑戦させるように組まれる場合があると説明しています。始めたばかりの人が毎回RXで行えないのは、ごく自然なことです。
スケーリングは、動作、負荷、回数、可動域などを自分の状態に合わせて調整することです。プルアップをリングローに替える、重量を下げる、レップ数を減らすといった方法があります。楽をするためではなく、フォームを保ち、その日のWODが狙う運動時間や強度へ近づけるための調整です。
初心者はRXの印より動きの質を優先する
スコアの横にRXと書けるかどうかだけで、成長のすべては測れません。睡眠、疲労、けがからの回復、技術の習熟度によって、同じ種目でも適した設定は変わります。重量を選ぶときは、続けられるかだけでなく、繰り返しても安全な姿勢を保てるかをコーチと確かめましょう。
記録には、Scaled、使用重量、代替種目も添えておきます。以前より重い設定で同じ回数を行えたのか、動作を安定させたまま同じ時間で終えられたのかを、次回に比べられるからです。
スコアは形式に合わせて残すと次回の比較に使える
WOD後は疲れていても、結果を短く残しておくと後から役立ちます。形式によって見る数字が異なるため、次のように分けると記録の意味を見失いません。
| 形式 | 主なスコア | 記録例 |
|---|---|---|
| AMRAP | 時間内のラウンド数とレップ数 | 5R+10(12分) |
| EMOM | 完了区間、各区間の重量・レップ数 | 10分完了、16kg |
| For Time | 全メニューを終えた時間 | 8:42 |
タイムキャップ内にFor Timeを終えられなかった場合は、完了時間の代わりに終了時点の進捗を書きます。AMRAPでは、同じラウンド数なら追加レップが多いほうが先まで進んだことになります。EMOMは、全区間をこなしていても、重量や動作の種類が違えば単純には比べられません。
数字とあわせて、「リングローへ変更」「12kgで実施」「プッシュアップは台に手を置いて実施」といった条件も残しましょう。次回に見るべきなのは、誰かのスコアとの差ではなく、同じ条件で自分がどう変わったかです。
まとめ|クラス直前に確認したいWODの読み方
慣れないうちは、ホワイトボードを見てすぐに動き始めなくてもかまいません。形式を確認するたびに、次の質問へ置き換えてみてください。
- 何分間、あるいは何ラウンド行うのか
- 1ラウンドや1分の中で、何回ずつ動くのか
- 終わったら時間とレップ数のどちらを記録するのか
- 指定の重量や動きは、今の自分で繰り返せるか
- 迷った部分をコーチに聞いたか
AMRAPなら時間内に積み上げる、EMOMなら毎分スタートする、For Timeなら完了までの時間を測る。ここを分けて読めれば、WODの内容はかなりつかみやすくなります。RXかスケーリングかも、見栄のためではなく、その日の動きを安全に続けるための選択です。
初月はスコアの数字を増やすことより、形式を理解し、自分に合う設定を選ぶことを優先しましょう。同じWODに再会したとき、条件と結果を見比べれば、ペースや動きの変化を具体的に振り返れます。